南スラウェシ州知事選挙をめぐる混乱は今後も尾を引くだろう。当地の治安状況に懸念が生じている。警察はマカッサルに「第1級警戒態勢」(Siaga 1)を発令した。
今後、マカッサル市内ではペッテラニ通りの州選挙委員会前、大学の周辺などで、様々なデモが行われる可能性がある。また、各県・市でも同様のデモが起こりえる。
現実問題として、デモや抗議集会だけでなく、支持者間の対立・衝突が起こる可能性も決して皆無ではない。十分な注意が必要である。
平穏無事に選挙を終えたかに見えたのに、なぜこのような事態になってしまったのか。
南スラウェシ州知事選挙は11月5日に投票が行われ、11月16日、州選挙委員会から「シャフルル候補(現州副知事)の当選」と結果が発表された。
これに対して、僅差で敗れたアミン候補(現州知事)側が最高裁判所に「州選挙委員会による選挙結果の無効」を申し立てた。この申立を受け入れた最高裁判所は12月19日、「選挙結果は有効だが、ゴワ、バンタエン、タナ・トラジャ、ボネの4県で向こう3〜6ヵ月以内にやり直し選挙を行うこと」との奇妙な決定を下した。
選挙結果が有効なら、シャフルル候補の当選は有効のはず。しかし、4県では選挙やり直しだという。これって、どういう論理なのだろうか。
ともかく、この決定が履行されると、2008年1月20日に予定されていた新州知事の就任は、やり直し選挙の結果に基づいて、3〜6ヵ月後へ延期になる。この延期期間中に、シャフルル候補側とアミン候補側の様々な対立がしこりとなって継続する可能性が強まった。
州選挙委員会は、「やり直し選挙を求めた最高裁判所決定には法的根拠がない」として、最高裁判所決定に対する異議申立を行うと決定した。
たしかに、最高裁判所が問題のある投票所での票の数え直しを求めた決定はこれまでにあった(西ジャワ州デポック市長選の例)が、県全体での選挙やり直しの決定は今回が国内では初めてである。最高裁判所が選挙やり直しを決定できると解釈できる規程は、既存の法律には見当たらない。また、アミン候補側が不正があったと訴えたのは3県で、タナ・トラジャ県は入っていなかったが、最高裁判所決定にはなぜか含まれた。
4県の選挙委員会は、自分たちの懸命の努力が「問題あり」とされたことに激しく怒っており、やり直し選挙をボイコットする動きをみせている。
州選挙委員会は、すべての投票所での証人のサインが揃っていて、得票数に整合性のある公式結果を提示したにもかかわらず、申立をしたアミン候補側の独自の開票結果が最高裁判所に受け入れられたのは遺憾であるとして、徹底抗戦のかまえを見せる。
これらに加えて、当選とされたシャフルル候補側の支援者が抗議行動を始めた。Jl. Petteraniの州選挙委員会前では、最高裁判所決定に抗議し、州選挙委員会とシャフルル候補を支持するデモが連日行われている。
新聞報道によると、休日明けの12月27日にマカッサルやトラジャなどで、シャフルル候補側による、最高裁判所決定に対する大規模な抗議デモが予定されている。一方、アミン候補側も対抗して、大衆動員を行う可能性がある。
現職の任期は1月19日で切れるので、内務省が中央政府の高級官僚を州知事代行に任命して、選挙結果が出るまで州知事業務をさせることになる。
もし万が一、仮に4県でやり直し選挙が行われ、アミン候補が勝利して、シャフルル候補の当選が取り消された場合、実はもっと恐いことが起こる。
シャフルル候補側は、アミン候補の選挙違反・不正の証拠を山ほど持っており、これが今度は最高裁判所に提示される可能性があるのだ。その証拠の量は今回のアミン候補側が最高裁判所に提示したものの何倍もある。おそらく、アミン候補の当選は無効になるだろう。そうなると・・・。
4県のやり直し選挙で、シャフルル候補が勝てば、事態は収束し、アミン候補の政治生命は絶たれることになる。
いずれにせよ、今後の状況の推移を注意深く見ていく必要がある。
【関連する記事】