2007年11月19日

『選挙の後に死す』

17日夜、イニンナワ・コミュニティを舞台に、地元芸術家のフィルマン・ジャミルが中心となり、『選挙の後に死す』というパフォーマンスが行われた。16日に南スラウェシ州知事選挙の結果が正式発表されたのを受け、住民から距離の遠い政治エリートを批判、とくに南スラウェシ州知事選挙も政治エリート層による権力者の交代に過ぎない、との主張を秘めた無言のパフォーマンスであった。

まず、プリンティス・クムルデカアン通りを挟んだ向かい側にあるメルセデス・ベンツのオフィスの前で、フィルマン氏を含む3人の演者が頭上に火を焚いた素焼きの小瓶を乗せる。3人はそのまま、交通量の多いプリンティス・クムルデカアン通りを車の流れを遮って渡っていく。

071117-0005_320.JPG

プリンティス・クムルデカアン通りをわたる3人の演者


プリンティス・クムルデカアン通りを渡ってきた3人の演者は、それぞれに用意された3脚の椅子の前で立ち止まり、頭上の火を焚いた素焼きの瓶を手に取り、上へ大きく掲げてから、椅子の上に置く。椅子には、南スラウェシ州知事選挙に立候補した3組の候補者ペアのポスターやステッカーが、それぞれ椅子をくるむように貼り付けられている。椅子の後ろのスクリーンには、マハトマ・ガンジーの映像が流れている。

さて、何が起こるのか。と思っていると、3人の演者はハンマーを取り出し、火を焚いた素焼きの瓶を置いた椅子をいきなり壊し始めた。勢いよく壊すなかで、素焼きの瓶の火が椅子に燃え移り、燃え上がる。スクリーンにはまだガンジーの映像が流れている。

071117-0009_320.JPG

椅子を思いっきり壊す


椅子が壊されて、3人の演者のパフォーマンスは終了。壊された椅子はそのまま燃やされ、炭になったところで、魚が焼かれ始めた。南スラウェシ州知事選挙の3組の候補者の味がしそうな、魚がどんどん焼きあがり、パフォーマンスを観ていた観衆に振舞われた。

071117-0013_320.JPG

焼かれた椅子の残骸で魚を焼く


通りすがりの人々が立ち止まってパフォーマンスを眺めた。驚いたことに、ほとんどの人がスクリーンに映されたガンジーのことを知らないか、名前しか知らなかった。火を通じた再生・新生への思いと住民の側に立った政治の実現を願う意味でのガンジーの映像が、理解できなかったのかなと思った。

「何をやっているか説明してくれ」という声も聞こえた。まずはパフォーマンスを見て欲しい。そして何かを感じて欲しい。その後で意味を考え、説明を聞いて欲しい、と思った。

『選挙の後に死す』は、なかなか面白いパフォーマンスだった。フィルマン氏は、すでに次のパフォーマンスを構想している。
posted by daeng at 13:55| Comment(0) | TrackBack(0) | マカッサル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス: [必須入力]

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック