この村のメリアヌス・トイ村長とは、昨年12月、ゴロンタロで行われたJICAのセミナーでお会いしたことがあり、そのときは、民族衣装を身にまとって、高校生たちに噛みタバコや村の産物について大声で説明していた。
幸運にも村長は私のことを覚えてくれていて、大きな木の下の木陰で止まることなく村の話を聞かせてくれた。木陰を渡る風はさわやかで、乾燥しきった大地とは対照的に、快適な時間を過ごすことができた。
村長はまず、村の生活に地域資源がいかに重要かについて話をしてくれた。ロンタラ椰子は飲用以外に家の建築材など様々に利用される。下の写真は、樹液を採取しているロンタラ椰子の木である。ロンタラ椰子は、南スラウェシ州南西部の乾燥地帯にもよく見られるが、こちらのほうが葉が大きく、緑が多いような気がする。ロンタラ椰子にも様々な種類があるのだろう。
次に紹介してくれたのが、耳慣れないクサンビン(Kesambing)という木(下写真)の話だった。
この木の種から油をとり、灯りに使っていたという。木の実を皮をはぎ、中にある種を取り出し、つぶして油を出し、その油を綿をよった導線に湿らせて灯りにした。腕くらいの長さの導線にするとけっこう時間が持つ。1970年代に灯油が使われるようになるまではクサンビンから油をとっていた。
このクサンビン、ジャカルタから調査チームが来て種を求めたそうだ。でも一体、学名は何という木なのだろうか。もしご存知の方がいれば、教えていただきたい。
ところで、今、村の最大の問題は「水」である。この村は、ティロン・ダムを抱えていて、このダムからクパン市内へ水が供給されている。クパン市の水がめである。しかし、このダムを横目にしながら、村人は毎日、2キロのアップダウンの道を水汲みのために往復する。
ティロン・ダム
5年前のダム建設の際に、村人が水を汲むための水槽が何箇所か設置されたのだが、5年経っても水槽に水が来ない、というのだ。ダムの周辺住民が水を得られず、ダムから遠く離れたクパン市民がこの村からの水を享受し、しかも給水地域をクパンし東部へ広げる計画だ。
村長は、水槽への水の供給を求めて、東ヌサトゥンガラ州知事に直接会って嘆願する意向だ。それでも水が供給されなければ、村人全員を連れてデモをかける、という。今までにも何度かマスメディアを通して訴えてきたが、状況は一向に改善せず、実力行使に出ざるを得ない様子だ。
問題としては古典的だが、なぜ5年間も水槽に水が来ないのだろうか。今年も乾季に入ってダムの貯水量は減少し、クパン市民への水の供給が心配されている。ダム周辺の山は木が切られてしまっていた。住民が燃料調達のために木を切ったのだろうか。
カラカラの乾燥したオエルナシ村を発ち、クパン市内へ戻る途中で、青々とした水田の向こうにクパン湾の海を見渡す景色がパッと広がった。水があるところとないところの色のコントラストが実に明解だった。
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ブログを見させて頂き、一度お話をお伺いさせて
頂ければと思いましてコメントさせて頂きました。
もしよろしければメール頂ければと思います。
何卒よろしくお願い致します。
あの頃既に、水不足はNTTの大きな問題でした。ダムがありながら、毎日水汲みに通う不条理、保水するための森が日々失われていく現実、もう少し何とかならないものでしょうか…ほんとうに。
ibuhijau様、森の木が失われたのは住民たちが燃料用の薪として切ってしまっているため、という面もあります。村長曰く、「約束」どおり水槽に水が来れば解決、ということなので、今はあまり大きな問題にして騒がないほうがよい、と個人的には思います。