と、ずーっと引っ張っておいて、話は、蚊取り線香に火をつけるときに使うマッチである。前に買いためておいたマッチがそろそろ残り少なくなったので、街中へマッチを買いに行ったのだが、これが売っていないのだ。大きなスーパーには置いていない。昔ながらのスーパーBaji Pamaiにはレジのところにちょっと置いてある。少し前までは、大きな箱に入ったものから小さいものまで、様々なマッチが売られていたのに、今は店内で売られていないのだ。
道端にはタバコ売りがいるから、そこに行けばマッチがあるのは分かる。しかし、一般家庭ではもうマッチなど使わないのだろうか。日本だって、まだまだマッチは使われているし、お店や旅館の宣伝に使っているはずだ。マカッサルの状況を一般化はできないかもしれないが、ちょっとなくなるのが早くないのか。
しかたなく、普通の安いライターを購入した。そして家に帰って、蚊取り線香にライターで火をつけてみた。すぐついた。マッチのときは、マッチ棒がしっかりできてないので、何本も折れてしまう。しかも、火力が弱いのか、つけても途中で消えてしまうこともたびたびだ。ところがこのライター、ちょっと火をつけただけでも火が消えない。マッチよりずっと楽だし便利。そうか、こうやって、マッチは店頭から消えていったのだな、と納得してしまった。
火打石が消え、マッチがなくなり、ライターや着火マンで火をつける時代がやってきた。火は人間にとって恐れるものではなくなり、制御できるものになってしまった歴史。ちょうど1年前に、日本の山村で火入れや焼畑の話を聞いたとき、火には不思議な力があると悟った。ライターで蚊取り線香に火をつけるようになると、その厳かな火の世界から一歩遠ざかっていく自分を感じてしまった。
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