2007年02月09日

ニャレを見にロンボクへ

2月5〜8日、ロンボク島へ行ってきた。1年に1度だけ現れるというニャレ(Nyale)を見るためである。恥ずかしながら、ロンボク島へ行くのは今回が初めてであった。

毎年、ニャレを見に来ていらっしゃるI先生に同行させていただき、ニャレについて様々なことを教えていただいた。ところで、ニャレとは一体何なのだろうか。

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夜明け前、海岸でニャレを探す人々(2007年2月8日)

ロンボクで「ニャレ」と呼ばれるのは、一般にパロロと呼ばれているゴカイの仲間、細長い虫である。通常はサンゴの中に潜んでおり、年に1回、いっせいに生殖器を本体から切り離し、その生殖器が泳いで海面に大量に現れる、というのである。

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これがニャレである


南太平洋のサモアやパプアニューギニアなどで見られるが、インドネシアでもロンボク以外に、スンバワ、スンバ、アンボン、ハルマヘラなどで出現が確認されているそうである。

ニャレは、日光に当たると液化してしまうので、夜明け前に現れるのをさがす。以前は、腕の体毛が見えるぐらいに明るくなるまでじっと待ってから、という決まりがあったが、今は早い者勝ちのような状況である。ニャレが現れる前には、大風や大雨(Omboek Nyaleというそうだ)が起こり続き、たくさんの稲妻とゴーッという海鳴りが聞こえる大波がある、と地元の長老が話してくれた。

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ニャレの出現日は、ササック族の暦で10月20日とされる。もっとも、ササック族の暦には閏月が複雑に入るので、1カ月程度の認識のずれが生じる場合がある。今回も、新暦の2月という人と3月という人がいた。それにしても、なぜニャレという動物が毎年必ず決まった日に現れるのだろうか。不思議である。

ニャレには伝説があるそうだ。ロンボクには西・南・東の3つの王国があり、南はマンダリカ姫が統治していた。そのマンダリカ姫に西・東の若い王がそれぞれ求婚した。優しい姫はどちらかに決めることができず、最終的に、海へ身を投げた。そのとき「毎年10月20日に会いに来ます」と言ったのだという。1年後、海に光が輝いた。しかしそこにはニャレしかいなかった。そこで人々は、ニャレをマンダリカ姫の化身と考えるようになった。

地元の人はニャレを食べる。さすがに南太平洋のように生で食べる人はいないようだが、姫の化身にあやかり、先祖に対して感謝し、家族の健康を願って食べるのだという。食べ方は、ココナッツミルクのスープに入れて「野菜」として食べるほか、葉っぱに包んで蒸し焼き(ペペス)にしたり、燻製にしたりする。ニャレは取ってきてからすぐに調理しなければならない。「それはそれは妻を忘れてしまうほどおいしいのじゃよ」とは長老の言。

ところで、今回のニャレの出方はどうだったのか。それなりの大雨や大風、稲光の後の2月7日早朝に少し出て、本番とされた8日には7日よりは出たが、昨年に比べれば本当に少なかったそうだ。ニャレを焼く煙も上がっていなかった。

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8日、市場でニャレ売りの女性に聞いてみた。値段は、写真のお椀1杯で7日は25,000ルピア、8日は5,000ルピアだった。「7日のに比べると8日のニャレは全然ダメ。私は8日のは食べないよ、7日のはすぐ食べたけど。私の夫は小舟でちょっと沖に出て網ですくってとってくるよ。ニャレ取りの名人なのさ」と言っていた。なるほど、8日のは色がちゃんとついてなくて、水ぶくれしたように見える(これをNyale Airというそうだ)。ニャレの色は緑、青、黄、白と揃っているものなのだそうだ。

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ニャレを取る網。ソロックとかソックと呼ばれる


本番の8日を控えた7日の晩は、前夜祭というような感じで、老若男女がわんさとニャレ取り会場へ押し寄せ、試しに車で行ってみた我々は、約1時間以上にわたって、前後左右身動きが取れない状態になってしまった。

通常は、ニャレの出現を祈る儀式やニャレにまつわる寸劇などが催され、そのまま夜を明かしてニャレ取りに突入するのだそうだが、今回はそうした催しがなかった。ニャレには「庶民のニャレ」と「政府のニャレ」があるとされ、今回のは前者であった。政府のニャレは2月12日、あるいは3月8〜10日とのことで、必ずしもササック族の暦に忠実ではない。

面白いことに、地元のホテルはニャレに関わる企画を打ち出すが、それは「政府のニャレ」に基づかなければならないそうである。庶民と政府の2つのニャレ行事があるわけで、これを一つにすればいいのにという声をいくつか聞いた。

でも、今回の庶民のニャレが大したことがなかったので、「もしかしたら」と政府のニャレに期待する向きも見られる。ササック族の暦に何か複雑な仕掛けがあって、10月20日は実は違う日だった、ということが起こるかもしれない。はてさて、政府のニャレのときには「大漁」になるのだろうか。


posted by daeng at 02:34| Comment(0) | TrackBack(0) | その他インドネシア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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