イリヤス氏は西ジャワ州の出身で、マリノで高原野菜を作り始めた草分けの存在である。彼に続いて、周辺の住民が高原野菜を作り出して所得を向上させ、今では、マリノは南スラウェシ有数の高原野菜の一大産地として有名になっている。
イリヤス氏とは、有機農業について意見交換をした。有機農業の必要性については彼は十分に理解しているが、化学肥料や農薬なしで生産することにまだリスクを感じていることと、販売市場で有機と非有機の産品との市場が同じで価格差が出ないことが、有機農業を躊躇させているとのことだった。ジャガイモやトマトは病気があるので、有機には向かないとの認識だった。
実際に畑を見せてもらった。ネギとキャベツが一緒に植えられている。これはリスク分散だけでなく、ネギの匂いで害虫をつきにくくする効果があるとのこと。でも、実際には虫食いだらけだった。若干の尿素肥料をまくが、無農薬で生産しているせいなのか。販売市場では「無農薬」と言っても付加価値はつかないという。
畑の土を棒でさすと、わずか約5センチしか入らない。土の下は硬い粘土層になっている。「この状態では作物の根が十分に張らない」と知り合いの大学の先生は言う。イリヤス氏によれば、鶏糞をそのまま畑に入れているというが、先生によれば、鶏糞を発酵させずにそのまま入れると、ガスがたくさん発生し、土が温まり、根が「焼けてしまう」とのことだ。鶏糞を3ヵ月ぐらい寝かして発酵させ、稲わらや籾殻などを混ぜて土中に空気や水が入りやすくし、1ヵ月ごとに混ぜ返した後、畑に入れたほうがよい、と先生がアドバイスしていた。
イリヤス氏は、少しずつでも有機農業を始めたい意向だった。まだまだ失敗もあることだろう。今まではちょっと急ぎすぎていたのではないか。じっくりと少しずつ、有機農業の試みを進めていくしかない。同時に、それを理解する消費者を少しずつ広げていく。それは我々の側の課題になってくる。
(畑の端にレモングラスを植えている。虫除けとのことだった。市場へは出していない)
【関連する記事】