このところ視察が絶えず、3月には国内だけでなく、ジャマイカ、ミャンマー、バングラデシュ、台湾、中国、フィリピンからも視察団が訪れています。彩り事業は株式会社いろどりが統括していて、その事業紹介には3人以下で1人3000円、4人以上だと1人1000円の料金がかかります。
上勝町は人口2100人、高齢化率46.27%の徳島県内でも指折りの高齢者の町ですが、寝たきり老人はわずか2人、1人当たり医療費は県下32位の年間20万円となっています。彩り事業で、上勝町の高齢者は毎日忙しく働いており、なかには年収1000万円を超える方もいらっしゃるそうです。東京の子供にマンションを買ってやった方もいるとか。
1本で250万円も稼いだ柿の木
かつては、朝から酒を飲み、時間に無茶苦茶ルーズで、負け組み意識の強かった人々の目の色が変わったのは、山にある葉っぱや木の実が、うまくやりようによっては宝になることを認識してからです。
つまものとは、季節感を演出するために料理に添えられる草花や葉っぱなどのこと。これがビジネスになることを会得した農協職員の横石知二氏が、町内のお年寄りを説得して、彩り事業を始めたのでした。様々な紆余曲折を乗り越え、20年以上かけて横石氏は誰にもまねのできない独自のつまもの需給予測手法を編み出し、つまものビジネスが利益を生む「仕組み」を定着させてきました。
その「仕組み」には、つまもの用の葉っぱなどを探すお年寄りへ需要予測に基づく情報を提供する同報ファックス送信や、高齢者用に改造したパソコンを使って売上高順位のみを見せて高齢者間のいい意味での競争心を促すなど、様々な工夫が施されました。その「仕組み」が高齢者一人一人に生活の中から自分で考える習慣を促し、高齢者が長年の生活習慣から抜け出させるきっかけ作りとなりました。
今では、つまもの用の葉っぱを取るために木を植え、枝を刈り、大事に草花や木々を手入れしています。柿の実よりも葉っぱが大事。見捨てられていた山が彩り事業で生き返ってきたのです。そして、荒れ果てた山間地は花が咲く美しい里へとよみがえっていきました。
山の上のほうまで「つまもの」になる草木が植えられている
春になると美しい花々で彩られる「彩の里」になる
農業だけ見れば3流の上勝町が隣のゆず日本一の村よりはるかに豊かな財政状況を誇れるのは、葉っぱだけでなく高齢者という地域資源を活用して主体的なほかにはできない独自のものを追求し、それを「仕組み」の形で持続できるようにしてきたことが重要ではないかと思いました。地域ブランドを住民個々の自分のことになるように組み立て、それぞれが知恵を出し合い、全員の力で地域ブランドをもり立てていく、そんな好循環が形成されていったのでしょう。
まだまだ書き足りないばかりです。時間を見つけて、もう一度内容を整理し、上勝町の魅力に迫りたいと思います。
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