2006年01月27日

カラ副大統領の対日批判?

昨日の共同の記事が話題になっているようだ。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060126-00000198-kyodo-int

原文は以下の英字紙Jakarta Postの記事。
http://www.thejakartapost.com/detailnational.asp?fileid=20060126.C01

カラ副大統領の発言は、在日インドネシア人の集まりでの発言であり、日本人へ向けてのものではない。彼が来日中に日本人に向けて話した内容とは当然違いがあるだろう。ただし、上記英文記事の主張の中には、私が1月24日に直接会場で聞いたカラ副大統領の演説に通じるものがある。しかし、それを対日批判と短絡的に捉えるのは間違いである。

24日の会場でのインドネシア語での演説では、いくつかの重要なメッセージが発せられた。第1に、2006年をインドネシアと日本の新たな関係の門出の年(Tahun Lembaran Baru)にしたいこと。第2に、税制、税関、投資法など投資促進のための懸案事項を向こう半年以内に大幅に改善すること。第3に、インドネシアは内向きと思われているかもしれないが、東アジア地域経済統合へ向けての役割を責任をもって果たす決意があること。第4に、大統領はじめ地方首長を直接選挙で選出するといった民主主義とイスラームとが両立できることを証明したいこと。カラ副大統領は、短いセンテンスで簡潔に力強く語りかけた。

冒頭の記事を髣髴させる内容が現れたのは、演説終了後の質疑応答のときである。対中関係と対日関係とのバランスに関する質問に対して、彼は「品質では日本だが価格では中国に軍配が上がる。日本が中国と競争的な価格で提供できるなら絶対に日本をとる」「中国だけでなくインドや韓国など様々な国々と良好な関係を築いていく」と述べた。またその関連で、30年経っても利益がほとんどないアサハン・アルミ事業を批判するくだりでこれまでの円借款に対する批判が出された。

カラ副大統領は日本との関係を最重要と位置づけ、これまでの協力に対して深く感謝すると同時に、今後は援助による主従関係ではなく、双方が利益を上げられるような良好なパートナーとしての関係へ移行することを望んでいる様子だった。そのために、インドネシア自身が借款や援助に頼らず、より自律性を高めたい、たとえばマカッサルの空港はインドネシア企業で建設してコストを抑えたい、といたメッセージが出されたのである。

とくに注目されたのは、事務レベルで協議が進んでいる日本との経済連携協定(EPA)の早期締結をインドネシアが望んでいることが明確に示されたことである。そこでは、インドネシア製品の日本市場への参入を阻むのは関税ではなく、日本の衛生・保健面などの非関税障壁の問題が大きいと指摘さえした。

カラ副大統領は、従来型の日本のインドネシアへの関わり方に不満を述べはしたが、それも対日批判と受け取られるのだろうか。彼のメッセージから読み取るべき最重要ポイントは、「2006年を門出の年とする」日本との新たな関係構築への大きな期待である。すなわち、日本のインドネシアとの関わり方へのエールである。本気になり始めたインドネシアに、日本はどんな本気のメッセージを返せるのか。

カラ副大統領は、南スラウェシ州出身のブギス人である。率直な発言でしょっちゅう物議を醸すし、感情もすぐに表面に出てしまう。直球で勝負するタイプである。24日の彼の演説はまさに直球であった。しかし、多くのインドネシアに関する識者は、ジャワ中心の変化球に長年慣れ親しんできた。日本はカラ副大統領の直球に変化球で返すのか。

税関やイミグレの役人だけでなく、元閣僚や最高裁長官さえ汚職容疑で取調べ・逮捕が茶飯事の今日この頃。インドネシアはそれほど変化してきた。それでもまだ不十分だといってインドネシアが変わるのを待つのか。変わったら本当に日本から投資が増えるのか。これって、まだ主従関係ではないのか。

変わらなければならないのはむしろ私たち、なのである。

posted by daeng at 02:48| Comment(0) | TrackBack(1) | 東京 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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誤訳?超訳?日本の対インドネシアODA
Excerpt: 共同通信が26日に配信した記事に「日本のODAを批判、インドネシア副大統領」とい
Weblog: 里山で月を眺めつつ、お茶でも飲んだら。
Tracked: 2006-01-27 09:21